NPOが遺贈寄付を受け入れる際に注意したいこと① 遺留分を侵害しない

こんにちは、大悟です。

遺贈寄付を受け入れたいNPOが注意したいこと、今回は「遺留分」について詳しくご説明します。

 

 

目次

 

 

遺留分とは、遺言で残したとしても奪えない、相続人の最低限の遺産取得権利のことです。遺言の内容が遺留分を侵害していると、NPOが相続人から遺留分の請求を受け、結果的に寄付が受け取れなくなることがあります。

その割合も法律で決まっており、より故人に近い関係の相続人が多く受け取れるように配慮されています。遺留分という権利が認められているのは、常識的に考えて相続人が期待できる取り分だからとも表現できるでしょう。

 

遺留分の割合は、直系尊属(親や祖父母など上にたどる相続人)のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合は相続財産の2分の1です。これを相対的遺留分と呼びます。相対的遺留分に各法定相続分を掛け算した割合が、それぞれの遺留分になります。これを個別的遺留分と呼びます。

分かりやすくする為に例を挙げて説明します。例えば、私の家族は父・母・兄・私の4人家族です。今父が亡くなり、母と兄と私が父の財産を相続する場合、相対的遺留分(鈴木家全体の遺留分)は2分の1です。それぞれの法定相続分は母が2分の1、兄が4分の1、私が4分の1ですので、私の個別的遺留分は2分の1×4分の1=8分の1となります。

よって、私は父の遺産の8分の1を受け取る権利がある、ということになります。

 

 

遺留分を侵害された相続人は、相続開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内であれば、「遺留分減殺請求権」という権利を行使できます。

この請求が発生すると、遺贈寄付を受けたNPOが相続人との争いに巻き込まれることもあるので、十分に注意が必要です。

遺贈寄付の他にも、死因贈与契約として遺産を分割する方法もあります。死因贈与契約は「契約」ですので、生前に寄付者とNPO双方の合意が必要です。遺贈と同じように扱われるケースが多く、死因贈与契約も遺留分減殺請求の対象になります。

遺贈は故人の一方的な意思なので、NPOが断ることもできますが、死因贈与契約の場合は必ず受け取ることになります。強制力と書式によって、それぞれにメリットデメリットが出てくると言えるでしょう。

 

 

  • 対策① 遺留分を侵害しない遺言を作成してもらう

「そんなことが簡単にできたら苦労しねーよ!」という声が聞こえてきそうですが、これが一番安全な対策方法です。生前に遺贈寄付のご意向をヒアリングできた場合は、寄付者に一声「遺留分を侵害されていませんか?」と確認したいところです。

遺言を執筆してから、実際に遺言を発動することになるまでに、財産が増減したり、家族構成が変化したりすることもあるでしょう。確実に故人の遺志を反映させる為にも、ある程度余裕を持って遺留分を確保しておきたいですね。

 

 

  • 対策② 付言事項を活用する

遺言には、決められた書式で書く以外にも、遺言を書くに至った動機や遺族へのメッセージを自由に記述できる付言事項という項目を作ることができます。

付言事項は遺言の本文とは異なり、法的拘束力はありませんが、遺言が血の通ったメッセージになる重要なポジションでもあります。

遺言に「認定NPO法人〇〇に□□円を寄付する。」と書いてあるだけだと、遺族は「どうして寄付するんだ。」「騙されたんじゃないだろうか。」とどうしても不安になるものです。きちんと付言事項に寄付をする動機が書いてあれば、遺族も寄付に賛成し、協力的な姿勢を取ってくれるかもしれません。

例えば、認定NPO法人かものはしプロジェクトに遺贈寄付する際の付言事項の文例を紹介します。参考にしてください。

 

<付言事項>インドの子どもたちの為に役立てて欲しい

私は生前より子どもが売られる問題には心を痛めておりましたが、その問題に一貫して取り組んでいる認定NPO法人かものはしプロジェクトに私の財産の一部を遺贈寄付したいと思います。老後の生活費で財産は減っているとは思いますが、私が亡くなった時には気持ちばかりのお金を、子どもが売られない社会をつくる為に役立ててください。

 

 

 

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

参考文献

『遺贈寄付ハンドブック(改訂版)〜遺贈寄付を受ける団体や相談を受ける人が知っておきたい大事なこと〜』(日本ファンドレイジング協会、藤原印刷、2018年)