資産寄付を阻む「みなし譲渡所得税」って?

こんにちは、大悟です。

 

日本の個人資産には1000兆円の不動産と1800兆円の金融資産があります。

高齢化社会の加速や相続人不在の相続いわゆる「おひとりさまの相続」が多発する為に、遺贈寄付や相続財産寄付のニーズが増えてくることは皆さんのご想像される通りです。

 

今回は含み益のある資産を寄付するときに注意したい「みなし譲渡所得税」の問題点について、まだご存知でない方に向けて紹介していきます。

 

 

目次

 

 

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  • 単純な含み益への課税

例えばあなたが100万円で買った株があるとします。

あなたが保有している間に120万円に株が値上がりしました。

そこで値上がりした株を売却すると、20万円の利益が出ます。

 

しかし、利益に対して所得税が課税されます。

株であれば一律20.315%の所得税が課税されますので、約20%とすると、

20万円の利益に対して、4万円課税されます。

あなたの手元に残るのは116万円、ということです。

 

こういった単純な利益に対する課税であれば、話は簡単なのですが、

寄付や譲渡が絡んでくると、少し問題が出てきてしまうのです…。

 

 

  • 含み益のある資産を譲渡すると発生する「みなし譲渡所得税

こうした含み益が出ている資産(株・不動産・骨董的価値のある商品など)を寄付する際、かかってしまうのが、「みなし譲渡所得税」です。

 

遺贈寄付者からNPOに対して、含み益の出ている資産を寄付するとなると、

遺贈した時点での価格に基づいて、

利益に対して相続人に課税されます。

 

ん…?

何かがおかしい…?

 

寄付した上に課税されるとは…?はて…?

 

 

相続人は現金も何も受け取っていないのに、税金だけ負担するという状況が発生します。また、みなし譲渡所得税所得税の負担を相続人に強いるだけでなく、所得の額面金額(見かけの収入)が増加します。

よって、健康保険料の負担金額が上がったり、住民税の負担が重くなったりします。

他にも、介護保険料が増加したり、配偶者控除が使えなくなったりと不都合なことが多いのです。

 

こうした税負担があるが故に、せっかく寄付する意思があったとしても、寄付を諦めざるを得ないケースが多いのです。

 

故人が亡くなった時に含み益のある資産を寄付するまではいいのですが、遺された人が現金支出として税金だけ負担するのは違和感が残ります。

この資産寄付のみなし譲渡所得税は日本だけで、外国人居住者に説明しても理解してもらえないそうな…。(そりゃそうだ)

 

具体的には死後に遺贈寄付する意思が記載された遺書が発見されて、相続人が相続開始から4ヶ月以内に所得税の確定申告書を提出し(準確定申告)、その申告期限までに譲渡所得税の納税をしなければなりません。

想像すればすぐ分かることですが、税理士や団体への連絡をしたり、実際に法手続きを進めるのはせいぜい四十九日が終わってからですよね?

亡くなった直後なんて遺族は葬儀の準備やお墓のことやらでバタバタしているものです。決められた短い期間の間に寄付まできちんと執行するのは、正直かなり慌ただしい。

 

そこで我々団体側ができることは、イザという時に迅速に対応できるように、税理士さんと普段からコミュニケーションを取っておくこと、慌てないように知識の習得やケーススタディの反復をしておくこと、遺贈寄付を受け入れていること並びに普段通りの広報活動に注力することくらいでしょうか。

 

 

  • 不動産を寄付するのは更にハードルが高い

空家・空き地の急増が社会問題化し、不動産を寄付したい、という声も年々高まっています。

先程お話ししたみなし譲渡所得税はもちろん、不動産の寄付は不動産を受け入れるNPO側にも様々な課題があります。

  • 土地をもらっても、上手く売却できない。
  • もらった土地を有効活用できない。
  • 税負担のリスクはしっかりのしかかってくる

といったところでしょうか。

直接的な税負担としては、不動産取得税、登録免許税、固定資産税、都市計画税といった税金を負担しなければなりません。

こうした資産税は税制面で普通の株式会社より優遇されているNPO法人でも、軽減されないことが多いです。

 

土地を活用する際も、都市計画法建築基準法農地法・森林法などの制限もあるので、かなりハードルが高いと言わざるを得ません。実際、不動産の寄付受け入れはほとんど成約例がないそうです。

奇跡的にもらった土地が有効に活用できるアテがあるならいいですが、多くの場合は不動産寄付のご意向を頂いても、丁重にお断りするか、土地売却後の現金を寄付してもらえるように働きかけることが多いようです。

活用できない土地だけもらって、税コストだけ増えるようでは、そりゃあ受け取れないっすよね…。

 

注意事項ですが、不動産を寄付してもらう際は団体側は必ず現地調査を実施しましょう。

例えば土地の下に産業廃棄物が埋まっていましたみたいなことが後から分かったりすると、団体の貴重な現金を余計なコストの支払いの為に使わなくてはならないケースも出てきます。

安易に不動産をもらう前に必ず専門家に相談することを心がけましょう。

 

 

 

 

  • 資産寄付税制の見直しを!

もっと寄付がしやすい社会にしていく為、市民が市民のための社会を作るという発想になっていく為にも、寄付税制が市民にとって使いやすいものになる必要があります。

 

資産寄付の税制を見直すことは、今後たくさん相続が発生する日本において急務なのです。

 

 

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。