寄付と投資は同じ
寄付も投資も社会にお金を投じて、そのお金が社会を巡った結果、自分にリターンが返ってくるという意味では同じことです。
目次
-
投資と寄付の違い
投資と一口に言っても、様々な投資方法があります。ここでは説明を分かりやすくする為に金融投資の代表である株式投資を例に挙げてみます。
投資は会社の事業そのものにお金を投じてその一部を所有することで、事業から生まれるキャッシュの一部を配当として受け取る行為です。一般的に想像される安く買って高く売るタイプの株式投資は、投機に分類されるのでまた毛色が違ってきます。
キャッシュを生むということは信用創造ができているということなので、安定的に稼げている企業ほど安定的に社会から必要とされている企業である、と評価できます。
一方寄付は解決してほしい社会問題、もしくは収益を度外視してもずっと社会に残り続けてほしいと思うものに対してお金を投じ、寄付者が思い描く社会が実現することがリターンとなって返ってきます。投資で得られるリターンよりもずっと曖昧です。投資は「お金を出して見守る・監視する」というニュアンスがあり、寄付は「信じて託す」というニュアンスがあります。寄付は一度自分の手元から出ていったお金がお金以外の形で返ってくることが多いので、ある意味投資よりリスクが高いと言えるかもしれません。
お金を他人の為に使うことで、社会の一票として資本を投じるという本質は投資も寄付も同じです。違うのは、そのリターンの分かり易さですね。
-
ROIとSROI
投資はROI (Return on Investment) によってその成否が問われます。例えば株価の5%が配当として毎年株主に分配される企業があったとしたら、ROIは5%です。20年で投下資金が回収できる、というように用いられます。
一方寄付の成果はSROI (Social Return on Investment) によって測られます。
SROI = 貨幣価値に換算された社会的価値 ÷ 投下資金
貨幣価値に換算された社会的価値とは、例えば働き方の多様性を推進させることで失業者が減ることによる貨幣価値や、意識や行動の変化を定量化し貨幣価値に置き換えることで数値化します。
SROIはソーシャルセクターへの寄付がどれくらいインパクトがあるのかが分かるだけでなく、助成金・委託金や会費収入の費用対効果を考える面でも活用されます。
-
NPOをどう評価していくのか
NPOの活動内容をきちんと評価していくためには、業界固有の事情を理解する必要があります。
- 社会課題の解決への貢献度は数値化したり、明文化しにくい変化が多く、リターンを評価しずらい
- 当初から数値目標を設定していない場合がある
- 理想の状態を一概に定義できない
評価を数字だけで捉えるのも、NPOの特性に合っておらず、投資評価と併せて定性的な面も同時に考慮する必要があります。
-
寄付者価値の向上
営利企業であれば、自社株買いや増配といった分かりやすい形で株主価値を向上させることができます。ではNPOはどのように寄付者価値を向上させていけばよいのでしょうか。金銭面の価値向上という面で言えば、寄付先が税制優遇適用団体へと昇格することはまず期待されることでしょう。またNPO側は寄付がどのように使われて、実際にどれくらいのインパクトを社会に創出できたのかを分かり易く可視化し、積極的に寄付者に情報を開示していく姿勢も大切です。団体の活動目的により共感してもらう為にも、営利企業の株主コミュニケーションよりも、NPOの寄付者コミュニケーションの方が密度濃くやっていく必要があると考えます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。